レ・ミゼラブル〜少女コゼット〜総評

世界名作劇場10年ぶりの復活にふさわしい良作なアニメでした。
テナルディエやジャベールの伏線もすべて回収し
最後はジャン・バルジャンの回想と懺悔、そしてミリエル司教から頂いた
銀の燭台の消えかかっているロウソクをかえてくれとコゼットとマリエルに
頼むことで、自分の命が消えることそして未来を彼らに託すことをほのめかし
「幸せになってほしい」といいのこし息をひきとる。
そしてエンディング。
コゼットの幼い頃とみまがうばかりの娘と菜の花畑を親子で歩く。
ファンティーヌとコゼットがパリから歩いてきた最初のシーンと
オーバーラップさせていて非常にうまい構成だ。
そして娘が胸のペンダントを指し


「あっ、お母さん、これきれーい!!」

「これね。これはね、お母さんの大切なペンダントなの。

あなたが大きくなったらもらってくれる?」

「うんっ!」

こうやって胸から胸へ伝わっていくものがあるんだねー。



ジャン・バルジャンの声「ヒトは変わることができる。人類も同じだ。」

昨今テロやら銃撃による殺人やら陰惨な事件が絶えないが
変われるんだと前向きなメッセージで fin というのはなかなかうまいなーと思った。


いまでも心に残るのはファンティーヌの落ちぶれぶり。
何話目だったか、たった30分で身も心もやつれ果て、
変われば変わるものにこそあれ、という感じで
しまいには病気になり虫の息。
強烈なインパクトだったあれは。
革命編ではコゼットの空気っぷりもすごかった。なにしてんのアンタ!?って感じで。
エポニーヌもかわいそうだったな、最後の見せ場もAパートのみで終了だったし。
落ちぶれても心は折れなかったいい娘になったのに。報われない恋と人生だったなー。
アゼルマとおかみは改心してパリを出たので
ちゃんとこれからはまじめにやっていくのだろう。
ガブローシュも学校では優等生。ハッピーエンドでよかった。


「ああ無情」は子供の頃読んだっきりだったのでこんなお話だったけかなー
と思いながら見ていたが、インターネット情報によるとかなり改編してるのね。

  • 原作ではガブローシュが活躍するのはパリからでコゼットと面識はない。また革命のときガブローシュは銃で撃たれて死亡
  • 原作で犬のシュシュは出てこない
  • 原作でジャベールはジャン・バルジャンに救われたあと橋の上から身を投げ自殺
  • 原作ではテナルディエはマリエルから手切れ金を受け取りアゼルマと共にアメリカに渡り奴隷貿易商になる
  • 原作でエポニーヌは隠語を喋り悪事も平気でやる娘
  • 原作ではマリエルはジャン・バルジャンの生い立ちを聞かされてこれを恐れコゼットから遠ざける。革命のとき下水道を伝って自分を助けてくれたのがジャンであることを後で知るという点は同じ
  • 原作ではコゼットが母のファンティーヌのことを知るためにシスター サンプリスを訪れるというエピソードはない



などなど。
世界名作劇場にふさわしいようあまり悲惨にならないように
うまくアレンジしているなーと思った。
子供時代のコゼットがいじめられてもやっていけたのは
ガブローシュとシュシュのおかげだし。
ガブローシュが生き残れたのもシュシュのおかげだったしなー、
この辺非常にうまく伏線を回収しているよ。
ジャベールも生き残ってテナルディエ逮捕とジャン・バルジャンの温情をマリエルに
気づかせるのに一役かってるしなー、見事というほかない。


脚本もすばらしい出来だったし、キャラデもイマ風でキャッチー、
(はじめは名作劇場の雰囲気にちょっと合わないかとも思ったが)
演出もこなれていて、いやぁーいい仕事してるなーと感心することしきり。
フランスではどうかしらんが少なくとも日本版レ・ミゼラブル コゼット編としては
決定版といっていいんじゃないか。
(例えば「フランダースの犬」の原作通りの悲しいラストは日本でしか受けないらしい。
負け犬の人生など、けっ、ということだそうだ。)
この調子で次も続くといいな。
スタッフのみんさまほんとにご苦労さまでした。